はじめてのおつかい

南田緑香

 正月すぎて間もなく、父の故郷の小樽の親戚の訃報がありました。私にはあいにく用事があり、休みが取れないという状況でした。85と81の父母はどうしても葬儀に参列したい、と言いはります。

 父はときどき歩行困難になるほどの腰痛持ち、母は大きな病気治療中ですが、幸いなことに現在は二人とも小康状態にあり、たっぷり時間をかければ一通りのことは自分たちでできます。それから父は健康が低下してからも、あえて月に一度は都内の駅を電車で乗り継ぎタクシーを使わず時間をかけて歩く「おでかけ」を積んでいました。

 迷いに迷ったのですが、年寄り二人きりで冬の小樽へ旅に出すことに決めました。
 航空券を手配し、スケジュール表と非常用の連絡先リストを作り、大きめの字でプリントアウトし、父よりはまだしゃっきりしている母に持たせました。

 出発の朝は羽田空港までいっしょに行き、インターネットの申し込み書の番号を機械に登録しての発券からチェックインを母にやって見せて、「帰りも同じようにするんだよ」と教えました。
 ゲートを通るとき、さっそく不手際があったのか係員に呼び止められて時間がかかり、行列を止めているのを後ろからはらはらして見送りました。まるでテレビ番組「はじめてのおつかい」の高齢者版です。

 翌日夕方、羽田空港に迎えに行きました。
 ニュースで北海道は猛吹雪だと報じられていました。飛行機が飛ばない場合や、JRが不通になり小樽から千歳空港まで行き着けなかった場合は、周りの親戚に迷惑をかけることになります。次の日の用事をキャンセルして、こちらから迎えに行くことも考えなくてはなりません。遠方に親戚があるというのは、元気なときや気候のいいときは楽しみですが、冬の移動は命がけです。
 しかし、羽田空港の表示でこの日の千歳からの便はすべて順調に到着しているのを知り、心からホッとしました。

 1泊2日のスケジュールを全部こなして両親は無事に帰ってきました。
 不思議なことに、小樽は青空だったと母は言ってました。

南田