ひとりきままな秩父巡礼(その2)

鴨下靖令

(前回からの続き)
 この古道は江戸時代からの道でした。片側は崖、一人で歩くのがやっとの道幅です。枯葉で滑るので、一歩一歩注意して進みます。滑り落ちたらすぐには誰にも気付かれないことでしょう。
 薄暗い山道を小一時間歩いた時、反対側から男性が歩いてくるのが見えました。
「巡拝ですか?」
「どうぞ気をつけて」と、声を掛け合ってすれ違いました。

 やっと国道に出ると、目前に長い石段。もうすでに膝がガクガクの状態なのにと思いながらも、満開の桜に励まされて上がりました。
 無事にお参りして、お寺の下にある食事処で一休み。バス停の前だったのでバスの時間を聞くと、1日に3便しかないとことでした。
「ちょっと待ってください」
店長が奥に入り、出てくると、
「今、息子が次のお寺までお送りします」
と言ってくださいました。
「えーっ、そんなー」
 バスが今から一時間も先では今日はもう歩けない時間になってしまいます。甘えることにしました。
 やはり仏様はいるのだなぁーと、嬉しくなってしまいました。
 食堂の息子さんに二十五番まで送っていただき、元気が復活しました。二十八番、二十九番と巡り、秩父鉄道の浦山口駅に出て帰路に向かう列車を待ちました。

 浦山口駅ではカメラを持った人が大勢いたので、桜を撮りにきているのかと思っていたら、満開の桜の中を蒸気機関車が走ってきました。
 充実の1日でした。

鴨下