どうしても食べたい

サロンド・ミネ 占い 新宿 南田緑香

 デパ地下で夕飯の食材買った帰り、上りエレベーターに乗るときにふと横を見たら、好きなおやつの店に珍しく人がいないのに気がつきました。円盤型のふわふわの皮の中に、小豆のあんこが入ったあのおやつ。

 どうしても食べたくなりました。エレベーターを上の階で降り、下のエレベーターに乗り換えて売り場に引き返しました。
 その間、たぶん1分くらい。
 先ほど見たときはまったく人が並んでいなかったのに、戻ってきたときには5人ほどの行列ができていました。これはこの店では短いほうです。いつも待つのが嫌で買いたいけど素通りすることが多いのです。でもせっかく引き返してきたんだし、今日は並ぶことに決めました。

 店はガラスで囲まれた小さなスペースで、焼き器が備え付けられています。並んだ人は行列をしながらガラス越しに、焼き機の上のお菓子の生地が焼けてくるようすを見物できるようになっています。
 2機の焼き機にそれぞれの職人さんが張り付いて、種を型に流し込んだり、あんこをヘラで生地の上に並べたり。ビデオを早回ししているようにテキパキ動いています。
 お菓子が焼き上がる様子を見るのは楽しいものです。生地に重く沈んだあんこのまわり、生地が膨らんできて、小さな気泡がふつふついってくるようすも、職人さんがくるっと生地の半分をひっくり返して、もう一方の生地と合体させる手つきを見るのも大好きなのですが、、、。
 今日はぜんぜん行列が進まない!!!!

 最初は心の中で
「空いてるラッキー!!」
と叫んで行列に並んでみたものの、一刻でも早くうちに帰りたいと思っているときに、一歩も動かない行列を待つ数分間はとても長いものですよ。

 列の前をのぞき込んでみると、最前のお客さんもお菓子が焼けるのを待ち遠しい様子で眺めていました。きっとあのお客さんが大量の注文をしたのでしょう。店はお客さんが少ない時間だったので、控え目の在庫で回していて品切れになったに違いありません。行列は長くなり、いまやたくさんの瞳が職人さんの動作に注目しています。

 一瞬で買えるか、うんと待つのか。この違いって、ちょっとしたことが積み重なった結果なんでしょうね。
 小さなことが積み重なり、思っていたのと違う結末になることはよくあることです。
 ふだんは気にならない、ちょっとしたことのタイミングが重なった結果で、交通渋滞も事故や災害もこんなふうに起きるのかもしれません。

 やがて焼き立てのお菓子が買えました。そのあとはスムーズに帰宅できました。
 すぐにお茶を入れ食べました。お菓子はまだ温もりが残り柔らかで優しい甘さ。
 疲れがだいぶ和らぎましたよ。

南田