鴨下靖令

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赤ちゃん紅葉

外出自粛の生活が続いていますが、今大きな顔で外に出られるのは犬の散歩ぐらいです。 海外のある国では、犬の散歩であれば街中を歩くのが許されているということです。 ただし、一人と決まっているので、家族全員が散歩に出かけるために、犬が何度も散歩をしなくてはならず疲労困憊とか……。 私にはこの季節、犬の散歩にかこつけた秘めやかな楽しみがあります。 遊歩道の大きな紅葉の木の下に、種子から発芽した紅葉をみつけること。 それは二葉の間から赤っぽい「ぎざぎざ」の葉をつけた小さな芽なのです。 遊歩道に残しても、初夏になると雑草の刈り込みや植木の剪定で抜き取られてしまうので、こっそり、そーっと優しく抜いて紙に包んで持ち帰ります。 急いで種子蒔き用土に植え込んだことがありました。1年後までに根付くのは、二十本に一本ぐらいでした。 ベランダには今、三年、四年目になった紅葉が育っています。 冬の間に葉を落とした爪楊枝ほどの木は、春になると芽をつけるのです。 毎日愛でるように眺めています。 ほんとうに嬉しくなります。 この頃、また十五〜六本の小さな赤ちゃん紅葉を見つけました。 ...
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暑さ寒さも彼岸まで

新型コロナウィルス感染予防のために、サロンが臨時休業になりポッカリと空いた日は、五年前に亡くなった妹の命日でした。 暖かなお天気に誘われて、亡き妹の墓参りに出かけました。 都心のホテルのような永代供養墓のカウンターで名前を告げると、係が出てきてエレベーターで階上へ案内されました。 コンピュータ制御された広く豪華な造りの部屋には、墓石が10基並んでいます。 そこでたった一人、焼香して手を合わせました。 この間1分ぐらい。 いくら丁寧に手を合わせても、誰もいない場所での1分は長く感じます。 コンピューターの墓は供物も花も上げる必要なしです。 すべてが整い、することは焼香と手を合わせることのみでした。 ふつうの墓参りは草取り、墓石を洗い、花や線香、水、お茶、好物のお菓子などを備えます。 そして手を合わせると少なくても小一時間はかかります。 時間だけでは計れないけれど、簡単すぎるのは少々寂しい。 手ぶらでお参りできる気軽さもあるが、物足りないと感じます。 カウンターでお参りが終わったことを伝え外に出ると、お寺の庭は梅や桃の花が美しかったです。 そ...
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生命の息吹

 桜並木の枝先がピンク色を帯びてきました。  今日の雨が木の芽起こしとなって、もうすぐ桜色に染まった街に変身するのでしょう。  我が家の猫の額ほどの庭にも季節を忘れずに、スミレや早咲き桜が遠慮気味に咲き始めました。  春はいちばん感じられ、明るい希望に胸を膨らませている方がも多いのでないのでしょうか?  そのようなこの時期、世界じゅうが「新型コロナウィルス」の感染にドキドキの生活を過ごしております。  今自分にできることは、マスク着用、手洗い、人ごみに出かけない等々。  少しのあいだ自粛していたら、春爛漫の美しい世界に迎えられると願いたい。  桜吹雪の頃に皆様にお目にかかれますように。 鴨下
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人のものを棄てるには

 最後の不燃ゴミの日、薄汚れた鍋や金具のついたカバンなどを処分しました。考えると捨てにくいので考えないようにしながら、朝から袋にポイポイ。後でどこに置いたかときっと探すだろうな、と思いながら。  夏と暮れの2シーズンのためだけに、考えに考えて2台目の冷蔵庫を購入しました。  設置場所は1階の夫の部屋に決めました。中型の冷蔵庫を一台置くために、本棚や小さな家具を粗大ゴミに出しました。1日がかりで部屋の中を全部片付けることになりました。  自分の物なら、高かったとか思い出の品であるとか迷いますが、人のものを棄てるには迷いがありません。  見事にすっきりした部屋に帰宅した夫は唖然としていました。  一階に冷蔵庫があると、夏は宅配の人に冷たい飲み物を上げられるし、お米や野菜など一度に届く重いものを入れられるから便利です。 鴨下
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背すじ凍る

猛暑続きのある夕方に背すじが凍るようなできごとがありました。 食事の準備には少々早い時間、エアコンの効いた部屋で読みかけの本を持ってソファに横になりました。何ページも読まないうちに、背中に痒さを感じて背中に手を回しました。 すると「フニャ」と、なにか柔らかい感触が……。 そう、私がもっとも嫌いな生物、幼虫? 声も出ないまま、一瞬の間にその物体を摘み、床に放り出しました。 「どうしよう?」 家には犬二匹と私だけ。誰も助けてくれない。 「片付けないと!動き出さないうちに!」 だけど、どこに放り出したのか?見えないし、見たくもありません。 「そうだ、掃除機だ」 床を見ないで隅から隅まで掃除機を走らせ、その後さらに電動モップで念入りに清掃をしました。 急いでシャワーを浴びたけど、手にあの感触が残っており、体が凍ります。 なぜ、背中に虫が入ったのでしょう? 外を歩くときは日傘を差しているし……。 考えているうちに気がつきました。 大嫌いな虫を見た瞬間に「きゃーっ」っと逃げ出す私は、幼虫など触ったこともないのに。 なぜ幼虫だとわかったのでしょうか? ...
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名の無い家事

カレンダーを8月に変えて、今月も立秋・お盆と日を追っていると、また一枚カレンダーをめくる日はすぐなのだろうと思います。 梅雨明けとともに熱中症が心配される日が続き、日中はなるべく外出しないようにしていると、家の中にはなんと「名の無い家事」が多いことか! シャンプー等の詰め替え。洗濯物のシミ抜き、ラジオ・時計・懐中電灯の電池替え。次から次へとふだんは見落としていることが多いのです。とはいえ、「今日なにした?」といえるほどの仕事ではないし。 「名の無い家事」に苦戦している女性が多いとニュースで知りました。 鴨下